遺伝学雑誌
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カヒコに於けるキアズマ觀察
前田 威成
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1939 年 15 巻 3 号 p. 118-127

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抄録

(1) カヒコに於ける交叉の性差の細胞學的根據を知る目的にて, その第一精母細胞と第一卵母細胞の減數分裂前期を檢した。(2) 卵母細胞の二價染色體に於るキアズマ形成に關する點を除いて, 精母細胞及び卵母細胞の減數分裂前期は全く正常に進行する。(3) 精母細胞の二價染色體に於るキアズマの形成と其後の行動には普通の場合との差が見られないが, 卵母細胞の二價染色體ではキアズマ形成が全く缺如して居る。即ち各二價染色體を組立てゝ居る一價染色體は, キアズマによりて結合することなく, 前期の早期, 即ちデイプロテーン期以來, 各末端にて相結合して居ることが觀察せられる。(4) Belling (1931, 1933) の計算法によりて, 本觀察で得られたディアキネシス早期のキアズマ頻度から, ある染色體の兩端に位置すると想像せられる2つの遺傳因子間の交叉率を計算した。この價は, 遺傳學的に之迄得られて居る最高の交叉率とよく一致した。(5) 以上の結果から, カヒコに於ては, キアズマ形成の性差が, 交叉の性差の原因であることを結論する。(6)雌の1個體にて例外的にキアズマ形成せられるのを觀察し, その意義について簡單に考察した。

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