2009 年 2009 巻 108 号 p. 108_7-108_18
茶園に生息するハマキガ類とその天敵寄生蜂類の相互関係を調べるために,2006年から2008年にかけて,ハマキガ類では誘蛾灯を,寄生蜂類では吸引粘着トラップを用いて発生消長を調査した。
誘蛾灯により採集されたチャノコカクモンハマキおよびチャハマキの年間総誘殺個体数は,両種ともに2006年から2008年にかけて減少したが,チャハマキに比べ,チャノコカクモンハマキの個体数の減少が著しかった。一方,吸引粘着トラップによって採集された寄生蜂類の年間総捕獲個体数は,タマゴコバチ類が最も多く,ハマキサムライコマユバチが次いで多かった。ハマキオスグロアカコマユバチおよびハマキコウラコマユバチも採集されたが,個体数は少なかった。タマゴコバチ類およびハマキサムライコマユバチは,2006年および2007年の捕獲個体数に大きな違いは見られなかったが,2008年には著しく捕獲個体数は減少した。ハマキオスグロアカコマユバチおよびハマキコウラコマユバチの捕獲個体数は,2006年から2008年にかけて減少し,2008年には,ほとんど捕獲されなかった。
誘蛾灯で採集されたハマキガ類と,吸引粘着トラップで採集されたタマゴコバチ類およびハマキサムライコマユバチとの発生消長を比較した。その結果,タマゴコバチ類の捕獲ピークは,チャノコカクモンハマキ雌成虫の誘殺ピーク10~28日(平均19.9日)後,チャハマキ雌成虫の誘殺ピーク2~25日(平均15.7日)後に認められた。また,ハマキサムライコマユバチの捕獲ピークは,チャノコカクモンハマキ雌成虫の誘殺ピーク2~48日(平均26.1日)後,チャハマキ雌成虫の誘殺ピーク1~39日(平均21.8日)後に認められた。加えて,これらの寄生蜂類は,寄主となるハマキガの卵や幼虫が長期間,茶園存在する7月下旬以降に密度が高まることが示唆された。このことから,これらの寄生蜂類を保護し,利活用を図るためには,7月下旬以降に,なるべく薬剤散布を控えたり,選択性殺虫剤を使用することが重要と考えられた。